事件の犯人を立証するものは物的証拠と容疑者の自由だけである。「証拠の王」と見られ、自白を得るために残酷な拷問が長いあいだ続けられた。明治十二年、人権尊重の立場から「大政官布告」によって自白主義は廃止され、それによって拷問も姿を消した筈である。だが ――-―三話に分かれた物語は、レズの妻をもつ夫の目を覆う残虐な私刑と権力側の二つの事件を生々しく描くもので、いまもなお密かに行われている悲惨な拷問の数々を告発するものである。
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